JR福知山廃線敷でフォト・トレック【行き方、写真のコツなど】

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ゴールデンウィークも終わり、お天気も躁鬱気味の荒れ模様。近畿地方では警報が飛び交いバケツをひっくり返したような大雨が降るも、その翌日は気持ちのいい五月晴れが広がるという予報だったので、カメラを持って散策にでも出かけたくなりました。

新緑の五月にまとまった雨が降った翌日は、天気が清々しいほどに緑たちも一気にその色を濃くします。

六甲山や岩湧山といった軽く日帰りできる山々が候補に上がりましたが、山登りするとなれば早起きは必須。まだ連休の気分も残っている中で、休みの日に目覚まし時計に起こされるのも癪なもの。

電車で簡単に行けて、朝早起きする必要もなく、「トレッキング」というほど大層なものでもなければ、「ハイキング」ほど無難でもない場所がどこかにないかと思案している中で思い当たったのが今回ご紹介するJR福知山廃線敷です。

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JR福知山廃線敷とは

別名、武田尾廃線敷とも呼ばれる廃線路。

かつては鬱蒼とした山々の谷間に落ち捨てられ、文字通り廃棄された線路として、肝試しの延長として線路上にあるトンネル目当てに密かな人気を集めていたスポット。そもそもは立ち入り禁止地域でしたが、押し寄せるハイカーたちにJRも渋々「自己責任」で解放していました。しかしその最中に危惧していた事故が起こり、管理するJRもこのまま放っておけないと2016年に整備を行い、今では一般にハイキングコースとして解放されています。

まだJRが国鉄だった1986年に新線の開通と同時に廃線となった約5キロほどの区間ということもあり、現在のJR福知山線から簡単にアクセスできることがポイント。そして無料というのもナイス。

途中にはいくつかのトンネルと武庫川渓谷にかかる鉄橋があり、関西の廃墟スポットとしても人気があります。

行き方と注意

JR福知山廃線敷へのアクセスは、ズバリJR福知山線の利用が一番。

廃線敷は現在のJR福知山線駅、「生瀬駅」〜「武田尾駅」までの間に打ち捨てられていて、この二駅と、その中間に位置する「西宮名塩」の三駅からアクセスが可能です。

しかしほとんどの利用者は生瀬駅と武田尾駅で乗降しており、選択はどちらの駅から出発し、どちらの駅を終着地とするか、ということです。

JR福知山廃線敷を堪能する上で、実はこの選択がなかなか厄介なのですが、その理由はおいおいと。

今回は大阪方面から向かう場合は宝塚駅で乗り換えてすぐの生瀬駅を出発とします。

全長が5キロ弱で平坦なコースが続く行程は気軽なものですが、廃線敷ということで落石や熊が出没する危険もあるようです。

途中には複数のトンネルがあり、ライトは必需です。スマホのライトでも代用できますが、バッテリー切れなどのアクシデントを考慮して懐中電灯やヘッドライトの持参を推奨します。

ルート上にはトイレはありませんが、生瀬駅側からのコース入口には簡易トイレがあります。

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生瀬駅から廃線入り口まで

最寄りの生瀬駅から廃線敷の入り口までは徒歩で約20分ほどかかります。駅を降りて、乗ってきた電車が走り去った福知山方面に続く坂を下ると交通量の多い176号線が現れ、片側のみの狭い歩道をテクテク歩きます。

やがて高架の中国道が見えてくるので、その下をくぐります。そこで現れる信号のない横断歩道を渡って、綺麗に舗装された道を下り、小道を進むとすぐに廃線入り口です。文字にすると分かりづらいですが、生瀬駅を降りてすぐには廃線敷までの地図があり、途中にも案内看板があるので迷うこともないと思います。心配な方は案内看板を写真に撮っておきましょう(撮ってなくてすみません)。

廃線を歩く

落石や熊や転落と怖い注意も目立ちますが、天気のいい日に川音を聞きながら、自然に呑まれつつある人工物を歩くのは気分がいいものです。

線路は取り除かれても、かつての枕木が続いていて、ここを電車が走っていたのかと思うと不思議な気分。

錆びついた速度標識や、石積みの物見台など時代を感じます。

そしてトンネル。

廃線敷上には合計でトンネルが六ヶ所あり、長いもので約300メートル。それだけ長いと外からの光は入って来ず、暗闇になります。そしてひんやりとした空気が気持ちいい。

写真を撮りながら歩きます。谷間を歩いていることもあり、景色は広がらず、ダイナミックな風景はなかなか現れない。それでも対岸に見える緑のグラデーションは美しい。

トンネルの暗闇にもいい加減飽きた頃、武庫川渓谷にかかる橋梁が現れます。赤く錆びついた橋がこのコース最大の見所。景色も広がり、気持ちのいい風が吹き抜けていきます。

橋梁を渡ってすぐのトンネルの入り口には、昨日降った雨のせいでできた水溜りが。スニーカーで来ていたせいで靴下を濡らして舌打ちをしましたが、トンネルに入り振り返ってみると、その水溜りには通ったばかりの橋梁の姿が水鏡になってきれいに写しだされていました。大雨の影響がこんなところにも現れていて幸運でした。

使わずに終わるかと思われた三脚を取り出してしばし撮影。この日は数えるほどの人としかすれ違わず、落ち着いて撮影できました。水面はちょっとの水滴や振動でも揺れて景色を乱しますので、人の往来が多いと厳しかったでしょう。

そしてトンネルを抜けると、春は桜、秋は紅葉が咲き誇る親水広場が現れ、そこから川岸まで降りることができます。あとは短いトンネルを抜ければ終点の武田尾駅が見えてきます。

全長4.7キロの廃線敷ハイキングもここで終わりです。

道は平坦で、距離も短いため、難しいことは何もありません。ただトンネル内は暗く、敷石も荒いため念のためトレッキングシューズがあれば最善でしょうが、足元をしっかり確認して歩けばスニーカーでも問題ありません。

ちょっとした『スタンド・バイ・ミー』気分を味わうにはもってこいだし、緑の多いこの季節はどこか『ホビット』に登場するようなファンタジーにも近く、途中には休憩が取れる場所もあるのでお子さんもきっと喜ぶのでは。

おすすめ撮影スポットとその他

冒頭で生瀬駅から出発するか、武田尾駅から出発するか悩みどころと書きましたが、その理由とはJR福知山廃線敷のフォトジェニックな場所のほとんどは武田尾駅側にあるからです。

そのため写真撮影を目的とするなら武田尾駅から出発した方がいいでしょう。

しかしハイキングという観点からでは、生瀬駅から出発した方が見所が最後にあるため達成感は濃いでしょう。それに武田尾駅には温泉もあり、生瀬駅から出発してゆっくりと廃線を歩き、そして温泉を浴びて帰るという楽しみもできます。

いずれの駅を出発点とし、終着点とするのかは、何を目的とするのかで見極めてください。また片道5キロ弱ですから、往復も可能です。

主だった撮影スポットは武田尾駅から橋梁までの間にあります。道幅も広いため三脚を立ててもほかのハイカーの通行の邪魔にはなりません。その区間は西側の景色が開けることもあり、正午を過ぎて日が下がってくるに従って、撮影に適した太陽光を取り入れることができます。谷間のため夕日を眺めるには適していませんが、季節ごとに変化する木々の色合いはオレンジ色の光でさらに映えることでしょう。

そのほかの区間は両側を山に囲まれるせいで、光の変化も乏しく、風景写真にはあまり適していません。ただし生瀬側からスタートしてすぐに続くコースは道幅も広く、対岸の山の切り立った斜面がよく見えるため、季節ごとの山色を楽しむにはいいでしょう。しかし繰り返しですが、太陽の姿が見えるのは正午あたりに限られます。これは風景写真にとっては決して最適な条件ではありません。

個人的には重いカメラバッグを背負うのではなく、軽快な広角レンズをつけてスナップ気分でハイキングするのがいいかなと思います。今回は35mmの標準レンズと70-200mmの望遠ズームを持って行きましたが、望遠はほとんど使いませんでした。

気軽に行けるハイキングスポットとしてオススメですし、外国人旅行者の姿もありました。

緑に育っていたカエデが紅葉する秋にまた行ってみようと思います。


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