アルメニアの首都エレバンを後にして向かったのは「国として認められていない独立国家」ナゴルノ=カラバフ共和国。現在はアルツァフ共和国とも呼ばれる謎の未承認国家です。
ここはかつてアルメニアとアゼルバイジャンのナゴルノ=カラバフ自治州を巡って激しい戦闘が繰り広げられた地域。
その実態を調査してきました。
謎の未承認国家ナゴルノ=カラバフとは?
ナゴルノ=カラバフ共和国、またの名をアルツァフ共和国。
そもそもはアゼルバイジャン領内の自治州だったが、領内の住人の大多数がアルメニア人だったこともあり、ソ連崩壊の予兆と連動するようにアゼルバイジャン人、そしてアルメニア人の民族意識がぶつかり合う最前線となり、1988年から紛争が本格化。
両軍合わせて3万人を超える死者を出し、100万を超える難民を生み出してしまった。
紛争はソ連の支援を得たアルメニアの勝利で終わったため、現在はアルメニア政府の庇護のもとにアルメニア人が実質支配しているが、国際社会はこれを認めず、アゼルバイジャンの領土でありながらその主権が及ばない未承認国家となっている。
ナゴルノ=カラバフへの行き方
国際社会が認めようが認めまいがナゴルノ=カラバフは事実上の国家である。そのため訪問するためにはビザが必要になる。
しかし面倒なことは何もなく、事前にエレバンにある領事館でも取得できるが、国境では提出を求められず、ナゴルノ=カラバフの首都ステパナケルトに到着後に市内にある外務省(写真下)で申請をすれば事後処理としてビザが取得できる。ビザ代は3000アルメニアドラム。
そこはアゼルバイジャン領内でありながらアルメニア人が支配しているということで、もちろんアゼルバイジャン側から訪れることはできない。現在は空港は閉鎖されている状況のため、唯一の道はエレバンからの陸路ということになる。
エレバンのキリキア・バスターミナルから朝8時ごろから10時までに2.3本のバスが出発している。値段は5000ドラム。所要時間は7時間ほど。
途中、山道を通るため車酔いに注意。
チェックポストのような国境を越える際にパスポートチェックあり。
ナゴルノ=カラバフの首都ステパナケルトの宿
ステパナケルトにはホテルから安いゲストハウスまで一通りは揃っている。
僕はR&Kホステルに泊まり、一泊4000ドラムでした。可もなく不可もなく。
ステパナケルトにはビザ屋やハンバーガー屋などもあるが、ゲストハウスといってもほとんどが民泊みたいなものなので、宿で食事ができるか聞いてみましょう。
ステパナケルトを歩く
首都、といっても元々は辺境の自治州の州都だっただけで、実際は地方都市くらいの規模。大通りにはスーパーやブティックが並ぶが、物品はアルメニアからの陸路輸送となるため、物価も若干高めで、何より物資が少ない。
キューバのように今でも古い車が走っている。
町から歩いて30分ほどのところにはナゴルノ=カラバフを象徴するモニュメント「We Are Our Mountains / 我らが山」がある。一見するとモアイ像のようだが、厳しい自然に囲まれたこの地で必死に生きる農民夫婦を表しているという。
外国人が珍しいのか人々はとてもフレンドリーで親切。しかし人の少なさ、そして物資の少なさを由来とする街の未整備が合わさり、雰囲気はとにかく暗い。
しかし後日、ステパナケルトから離れることでこの陰鬱とした空気がさらに強くなることを知るのであった。