トラブゾンに滞在した後、バスに乗ってトルコ東部アナトリア地方に位置するトカット(Tokat)という街を訪れました。
ここは独特な刺繍文化に加え古い建造物が立ち並ぶことでも知られていますが、僕がこの街に立ち寄った理由はまったく別にあります。
トカット市内の小高い丘に建ち、今では廃城となっているトカット城からあのドラキュラにまつわる新発見があったためです。
それではトカットの紹介です。
トラブゾンからトカットへの行き方
トラブゾンからトカットまでの直通バスはなく、トカットから100kmほど離れたシワスという街まで行き、そこでバスを乗り継ぎます。
トラブゾンからシワスまでが約9時間。朝と夜に複数のバス会社が運行しています。
トカット城に登るも ….
さて今回はトカットに泊まることなく、シヴァスから日帰りの予定でした。
そのため時間もなく、目的地はトカット城に絞ることに。
市内から歩いて約30分。トカットのバスターミナルからでも歩いて一時間ほどでトカット城に着きます。
ここは近年、廃城の内部に巨大な空間が発見され、トンネルは麓の町まで伸びていたそうです。そのためオスマン帝国時代にはここに多くの重要人物が幽閉されていたと考えられています。
その中に、若かりし頃のヴラド・ツェペシュも含まれていたと想定されているのです。
このヴラド・ツェペシュ、別名串刺し公ブラド。
そう、あのドラキュラのモデルとなった人物なのです。
ドラキュラ誕生の地か?
トランシルヴァニアのワラキア公国の王子として誕生したヴラド・ツェペシュは、父親が君主を務めていた頃に、近隣のハンガリー王国の脅威に対抗するためにもう一つの大国オスマン帝国の軍門に下ることを決意。
その際、人質として幼きヴラド・ツェペシュはオスマン帝国内の領地に幽閉されていていました。
この時「父に売られた」と感じた経験が後に露わになる残虐性の原点とも考えられており、その意味ではここトカット城がドラキュラ誕生にきっかけとなった可能性があるのです。(ヴラド公がトカット城に幽閉されていたと確定したわけではないですよ)
ハマーフィルムと呼ばれる怪奇映画シリーズが好きだったこともあり、このトカット城からどんより曇る市内を見下ろした時は、感慨深いものがありました。
もしかするとこの光景を若き日のドラキュラ公が眺めていたのかもしれないのです。
残念ながら現在トカット城は内部まで見学することができませんが、雰囲気は十分に味わえました。
故郷を離れ家族とも別れ、孤独に苛まれた少年ヴラドはここで悪魔に魂を売った引き換えに、永遠の命を手に入れた……、なんて考えると変哲もない景色の向こう側に物語が透けて見えるじゃないですか。
城の内部に入れなかったのは残念でしたが、来てみた甲斐がありました。