アッパー・スワネティ地方のメスティアから、コーカサスのさらに奥深くに潜む秘境ウシュグリに向かいます。
厳しい自然の盾で、長く孤絶した環境の中で育まれた独特の文化と風習が今でも残る。
ここはユネスコが「天空の博物館」と評し、世界遺産にも登録された場所です。
ウシュグリへの行き方
メスティアからウシュグリまでは険しい山道を2時間ほど走ります。
夏の間、メスティアからウシュグリまでは観光用のバスは出ています。朝にメスティアを出発し、ウシュグリで数時間滞在した後、夕方前にメスティアに帰ってくるタイムスケジュール。
オフシーズンの場合はタクシーをアレンジするしかありません。
一台約200ラリと高額なので他の旅行者とシェアすることをお勧めします。人数が足りない時、もしくはグループに入れて欲しい時は、ツーリストインフォメーションに相談してみましょう。
僕の場合はウシュグリで二泊ほどしたかったので、日帰り予定の他のメンバーとは行きだけ一緒に行き、二日後に同じドライバーに迎えに来てもらうことにしたため、60ラリ払うことに。
ウシュグリの宿
ウシュグリは秘境と呼ぶにふさわしい場所ですが、近年は道路状況の大幅な改善もあり、観光は住民にとって重要な現金収入の機会となっています。
そのためゲストハウスやホームステイを掲げる家が驚くほど多く、どこに泊まろうか悩むほど。
せウシュグリ名物の塔を観光客に部屋として貸し出しているところもあります。一泊二食付きで35ラリでした。
天空の博物館
それではウシュグリを探索しましょう。
ウシュグリには4つほどの集落があり、タクシーはその中でも一番大きなところに停車します。ゲストハウスもその集落にかたまっています。
日帰りでは頑張っても二つの集落を訪れるのが精一杯でしょうが、特別な何かを見るというよりもユネスコが言うようにウシュグリ自体が博物館のようなものなので、のんびりと散策することをお勧めします。そのためにはぜひ一泊してもらいたい。
ウシュグリは村の名前というよりも全集落を指していて、その背後にはジョージア最高峰のシュラハ山が綺麗に見えます。
ここの標高は2300メートルほどでアゼルバイジャンのキナリック村同様に、ヨーロッパで最も高い村と名乗っています。
そして塔。
メスティアにあった塔よりもウシュグリのそれは一回り大きく、そして現在も住居や家畜小屋として使われている場合が多く、中には作っている最中のものまでありました。
ここは昔から砂金が出ることで知られ、それを狙う襲撃に対抗するため塔は作られたと言われていますが、「復讐の塔」と呼ばれる所以は別のところにあります。
長く中央権力の影響を受けなかったこの地方では、近親者への危害に対して暴力で応じるという復讐法が近代まで残っていて、暴力の応酬から家族を守るために作られたとも言われています。
もちろん今は警察が出張ってくるので消えてしまった風習です。
ちなみにこのウシュグリは1980年代後半に数度にわたって大きな自然災害に見舞われ多くの住民が離散。時を同じく、ソ連崩壊の混乱によって中央政府の力が弱まり、2000年代ごろまではジョージア国内の犯罪逃亡者たちがこの地域に逃げ込んだせいで極度に治安も悪化していたそうですが、今は安全ですよ。
昼間は観光客が多いですが、彼らが帰る時間になると家畜の鳴き声と馬の足音しか聞こえない静かな環境。まさに博物館のようでした。